研究概要 |
長尺の工作物やセンタ支持できない工作物を旋削加工する場合には,通常,振れ止め機構を使用する.本研究では,旋削加工時のびびり振動の抑制に対して振れ止め機構を応用した能動型防振機構を試作検討してきた.特に切削工具の剛性が低い場合に対し,びびり振動を抑制するように制御方法を改良し,特性を調査した. 試作機構では,回転する工作物のラジアル方向の位置を変化させることによって,工作物と切削工具の間の相対振動を抑制する.工作物にはアルミニウム円管を使用し,内面旋削加工を対象とした.フィードバック制御により振動を抑制する方向は背分力方向に限定し,実験用切削工具も背分力方向のみ剛性を低下させた.工作物の背分力方向変位は渦電流式非接触変位センサにより検出し,切刃の変位は切削工具シャンク部に貼付したひずみゲージの出力により換算した.制御のための演算等はパーソナルコンピュータとアナログ電子回路により行い,リニア型圧電アクチュエータにフィードバックして,工作物を保持している軸受部を駆動し,振動を抑制した. 振動抑制の制御方法としては,単に工作物と切刃の各変位をフィードバックする方式と,びびり振動の再生効果を考慮した新しい制御方式について検討した.前者は一般的なPID制御方式から派生したものであり,後者は本研究で新たに提案した制御方式である.解析には計算機シミュレーションと実験を併用した. その結果,両方式ともびびり振動を完全には消滅させることができなかったが,振動抑制に対する効果を確認することはできた.試作機構に関して,アクチュエータ駆動回路の許容電流値や応答帯域を向上させるべきであると考えられた.また,再生効果を考慮した制御方式については,原理的に再生びびりそのものの発生を防止できることが期待できるため,今後さらに深く検討すべきである.
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