研究概要 |
本研究は微細せん断の加工機構を明らかにすることを目的としている.微細な製品をせん断するためには細長いパンチが使われるが,細長いパンチは剛性が弱いため,加工中作用する力により変形する.このパンチ変形が現在実際に行われている極めて高い精度の加工を助けていると考えられている.具体的にはパンチとダイの心がずれていてもパンチは心を合わせる方向に変形するという機構である.そこでその詳細を調べるため,まず,加工中のパンチ変形量を正確に計測するための手法を確立した.その方法によればパンチ全体の変形量が正確に求められるばかりではなく,その変形に寄与する力やモーメントも正確に求めることができる.その手法を用いたパンチ変形計測を様々な加工条件に対して実際に行った.これによりせん断加工中の細長いパンチの変形について以下のことを確認した.1.パンチのサイズを適切に選ぶことにより,パンチとダイの心のずれをパンチ変形によって是正させることが可能である.2.上記のパンチの適切なサイズを決定する際にはパンチの曲がり易さだけではなく,打ち抜く材料の厚さを考慮する必要がある.3.適切なサイズのパンチを選択すれば,パンチとダイがぶつかる位置まで互いの心がずれていたとしても,パンチが変形することによりパンチとダイがぶつかることなく加工を行うことが可能である. また,せん断加工中の材料内部の状態を正確に把握するための手法としてVisioplasticity法に着目し,せん断加工される材料に生じるような大きな変形に対しても適用可能な変位計測方法を取り入れた解析システムを提案した.そのシステムは実際に製作し実験によりその有効性を確認した.現在,それを用いた解析を様々な加工条件のせん断加工に対して行っている.
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