研究概要 |
大形2サイクルディーゼル機関の用いられるクロスヘッドピン軸受は、常に下向きの荷重を受けながら低速で搖動運動を行うすべり軸受であり、軸受面に形成される油膜厚さは極めて薄く、油膜が交換されにくい。通常のクロスヘッドピン軸受では荷重側の軸受面に多数の軸方向油溝を設け、軸受の搖動運動により油膜が交換される構造にしているが、負荷能力は低く、軸受メタルの焼損や亀裂事故が発生しやすい。近年、大形機関の高過給、高出力化に加えて低回転化が進み、潤滑状態が一段と苛酷化する傾向にあり、クロスヘッドピン軸受の負荷能力を向上させることは重要な課題である。 クロスヘッドピン軸受の外部に高圧の注油補機を装着し,軸受面に供給する潤滑油の給油圧力を高める静圧軸受機構を適用すると油膜厚さは増大し、負荷能力が向上する可能性が見込まれる。そこで本研究では、静圧型クロスヘッドピン軸受を対象にした軸受性能試験機を用いて機関の実働状態に相似な変動荷重、搖動すべりの条件下で負荷限界試験を実施した。その結果、クロスヘッドピン軸受に静圧軸受機構を適用すると1サイクル中の油膜厚さとその変動量が増大し、負荷能力が大幅に向上することがわかった。また静圧型クロスヘッドピン軸受に供給する潤滑油の給油圧力を増大させ、軸受メタルに設けるオイルポケットの面積を増大させると、油膜厚さが増大し、負荷能力の向上に有効であること、静圧型軸受メタルのオイルポケットピッチ角を増加させると,有効軸受面積が増大し負荷能力の面で有利であるが,ピッチ角が大き過ぎると油膜厚さが減少し負荷能力が低下することなどが明らかになった。
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