歯車や2円筒などの転がり-滑り接触面において問題となる摩擦・摩耗、転がり疲れや焼付きの発生は相対する二面の表面粗さの影響を大きく受けるが、初期粗さのみならず運動に伴うその変化(なじみ効果)も極めて重要なファクターである。従来、接触面の表面粗さは二次元の断面曲線に基づくパラメータ(算術平均粗さRa、最大高さRy)で評価されてきた。しかしながら、加工目方向や粗さ突起の形状・分布状態によっても異なる転がり接触面の摩耗や塑性変形によるミクロな表面形状変化をより詳細に捉え、評価するためには同一箇所を繰返し精度よく測定できる三次元測定法が必要である。 本研究では、2円筒転がり-滑り試験に用いる円筒試料の同一箇所を繰返し精度よく測定できるよう三次元粗さ測定法を工夫した。即ち、触針式三次元形状測定装置にリニアゲージセンサを取付け、ミクロンオーダでの位置決めができるようにした。そして試料の非接触面に打ったビッカース圧こんの最下点を基準としてサンプリング開始点を決定し、0.75mm×0.75mmの接触面について三次元計測を行った。また、高荷重条件下での接触面形状の変形に対応できるように測定領域内に設けた2つのビッカース圧こんの最下点位置を基準とし、3次たたみ込み関数を用いて0.5mm×0.5mmの解析領域内の粗さデータを内挿法により求めた。 このようにして得られた接触面粗さデータをもとに十点高さSzや二乗平均平方根偏差Sqなど三次元粗さパラメータの値を求めるとともに、表面凹凸の変化を示す等高線表示や設定した高さレベルでの切断面表示などの画像処理を行い、摩耗や塑性変形による接触面のミクロな形状変化を視覚的にかつ定量的に把握した。
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