著者はこれまでに、気泡を含む液体中における非線形圧力波(衝撃波)の非定常な伝播挙動を、衝撃波管を用いた実験的解析によって明らかにしてきた。それと同時に、気泡流中の圧力波伝播現象を正確に記述した数学的モデルを用いて数値解析を行い、実験結果との比較によってこの現象の本質に迫ってきた。これまでの研究結果から、1.気泡流中の波動伝播は気泡の膨張・収縮運動に支配されており、膨張・収縮運動にともなって生じる気泡内の非均一な温度場の影響を大きく受けること、2.液体中に分散する気泡の不均一な分布状況が衝撃波の内部構造に大きな影響を与えること、3.本研究で用いた気泡流波動伝播解析モデルを用いた数値解析結果は多くの実験結果と定量的に一致すること、を明らかにしている。 本年度(平成7年度)は、衝撃波管内に気泡が均一に分布する場を作り出し、3種類[窒素、アルゴン、六フッ化硫黄(SF6)]の熱物性値の大きく異なるガス気泡を用いて、均一分布気泡流中の衝撃波の伝播挙動に対する気泡内ガスの影響を実験的に調べると同時に、対応する数値解析を行い、両者の比較を行った。管内気泡流における気泡分布を実験的にコントロールすることは、分布が気泡流の流動構造と密接にかかわっているために、大変難しいことである。著者は、衝撃波管内の気泡流を適当な上昇流にするとともに、気泡発生管の配置にも十分な注意を払うことによって、管内全域にわたる均一気泡流を得ることに成功した。さらに、このような均質気泡流中での衝撃波の非定常な波形変化の再現性はきわめて良好であることを確認した。実験と数値解析との比較を行った結果、すべての実験結果は数値解析結果と定量的によく一致した。このことから、本研究で提案する気泡流中波動伝播解析モデルの適切性を強く証明した。
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