確率微分方程式のランダム項にフラクタルブラウン運動の増分(フラクショナルノイズ)を用いることによって、発達乱流場の速度成分のシミュレーションをおこなった。実験データからもとめるパラメータをもとに、シミュレーション速度信号にはエネルギースペクトルの普遍法則(Kolmogorov -5/3乗則)を再現でき、散逸スペクトルの形も指数型とした。その減衰指数は、実験データに一致させることにより、散逸スペクトルについても良い一致を示した。 さらに、高次モーメントの考察から、シミュレーション信号に間欠性を付加した。これは、一次元の間欠性カオスに基づく写像である。これにより、速度構造関数の高次モーメントまで実験と一致した信号波形を構成できた。最終的なチェックは、以下の2種類の方法でおこなった。(1)乱流信号の局所のハ-スト指数のゆらぎをWaveletにより取り出し、その確率密度関数を比較することによっておこなった。シミュレーション信号と実験データは良好な一致を示し、本速度シミュレーションが有効であることを確認した。(2)速度差の確率密度関数の形を実験データのものと比較するために、情報幾何学の分野で用いられているカルバックライブラ-のダイバージェンスを用い、定量的な評価をおこなった。両者は慣性小領域内で良く一致し、本シミュレーションの妥当性を確認した。 以上の論議は一次元での内容であったが、連立確率微分方程式を用い、二次元に拡張した。エネルギースペクトルに付いては、一次元の場合と同様な結果となったが、高次モーメントに付いては今後の課題である。 本シミュレーション方法が、今後工学的な応用面での研究に役立つように、さらに改良を加える予定である。
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