1.はじめに:混相流は時々刻々と変化する界面を持つ流れであるため、定量的な計測が困難であり、流動機構を解明するためには、まだ十分な実験データが得られていない。特に、気液界面の不安定現象に対しては、多くの理論的研究がなされてきたが、それらを裏付けるための気液界面の微細構造については、十分な実験データが存在しない。また、混相流の数値解析は今後の発展が期待されるが、計算コードの検証のための実験データが乏しく、大きな問題となっている。このため、本研究においては、同軸噴射弁から噴射される液体と周囲空気との間の気液界面の形状を定量的に計測するために、高倍率撮影用光学系とレーザー誘起蛍光法を用いた画像解析システムの試作と検討を行た。 2.実験装置および条件:計測対象となる同軸噴射弁の製作を行なった。液体(水)が噴出する流路の直径は1mmであり、その周りをリング状に空気噴流が流出する。空気噴流の流路幅は1mmであり、液体の流路と空気の流路の間は、幅0.3mmのステンレス管で仕切られている。実験を行った条件は、空気流速を10m/sに固定し、水の流速を0.5m/s〜2m/sまで変化させて行った。 3.計測装置:噴霧界面の撮影のためには、ワーキングディスタンスが長く、100倍程度の解像度を持つ高倍率撮影用光学系が必要となる。このため、天体望遠鏡の光学系を基本にした高倍率撮影用光学系の試作を行った。製作した光学系のワーキングディスタンスは、300mmであり、撮影倍率は100倍である。また、レーザー誘起蛍光で界面の形状を平面的に得るために既存のアルゴンイオンレーザーに対応するレーザーシート光学系の設計、製作を行なった。気液界面は、水中に混入されたロ-ダミンBからの蛍光により、鮮明に可視化可能となる。 4.気液界面の可視化と形状の定量的評価:上記の実験装置およびレーザーシート光学系を用いてロ-ダミンB混入した水噴流が周囲の高速気流との相互作用により発生する界面の微細構造の可視化を行った。また、得られた画像をカルマンフィルタを応用して、波長の長い波と短い波に分離し解析する手法を考案した。その結果、波長の長い波は、気体の流速と液体の流路の差に強く関わっており、速度差が大きくなるほど波長は短くなることがわかった。一方、波長の短い波は、ランダムに発生しており、気相と液相中の乱れに関わっていると考えられる。
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