研究概要 |
生体内の血流に代表される弾性管内の流れは人工的に作られた剛体管内の流れに比べ,摩擦抵抗が非常に小さいことが知られており,摩擦抵抗軽減現象の流動機構の解明が急務である.本研究では,これまで流入流れが定常流の場合について弾性管の摩擦抵抗軽減の有効性を確認できたのでこの成果を踏まえて,生体内の血流にみられる拍動流の影響を調査する.実験では,拍動流の周期および振幅を種々変化させた場合の圧力変動特性および変位変動特性を計測できたことから、拍動流中の摩擦抵抗軽減現象について一知見を得ることができた。以下に結論を要約する。 1.まず、流入流れが拍動流の場合について弾性管外壁の変位変動特性を計測すると、本実験条件の範囲においては流入流れが定常流の場合と平均変位はほとんど変化がみられなかった。よって、弾性管の管断面積変化によるみかけの管摩擦係数の評価は定常流の場合と同程度であることがわかる。 2.上述の評価に基づき、流入流れが拍動流の場合について弾性管と剛体管の時間平均管摩擦係数の差異を比較すると、拍動流の周期および振幅を種々変化させた場合において弾性管のほうが剛体管の場合より抵抗減少がみられた。これは定常流の場合と同様な傾向を示しており、拍動流による顕著な違いはみられないことがわかる。 3.上述の現象は圧力変動特性を周波数解析することにより裏付けられた。すなわち、弾性管内の変動圧力の乱れが剛体管のそれよりも小さいことを示している。
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