垂直管内下降気液二相流を利用した空気圧縮装置(HAC)に関する研究を行った。大気解放された上部水槽から供給される垂直管内の水単相の流れをベンチュリー管に導き、静圧が大気圧よりも低くなるようにして大気を自然吸気させて気液二相流とする。二相流となった流れは再び垂直管内を下降し、下部の密閉水槽へと至る。下部水槽で液相と気相は分離され、圧縮空気が得られる。吸気部の位置、ベンチュリー管喉部径dと垂直管径Dの比(絞り比d/D)、垂直管および吸気管の弁開度を変化させて実験を行った結果、以下の事が明らかになった。 絞り比が小さい場合、あるいは吸気部位置が上部水槽に近い場合(高い位置にある場合)は、絞り部での静圧が飽和水蒸気圧程度まで低下し、キャビテーションが発生することもある。このような場合には流動がかなり不安定となる。これは吸気部静圧の低下により吸気量が増大し、吸気部下流側で大気泡が形成されることが原因と考えられる。大気泡が形成されると、液相の流速が低下するために吸気部の静圧が上昇し、吸気量が減少する。すると大気泡が形成されなくなり、すでに垂直管内に存在している大気泡が下部水槽へ流出すると、再び流速が回復するため、吸気量が増大する。今回の実験の場合、圧縮開始(流動開始)から終了までの時間が5秒程度と短かったため、脈動流には至らなかったが、大規模なHACでは脈動的不安定現象の生じる可能性が考えられる。空気圧縮に関しては、到達圧力が上部水槽と下部水槽の水面位置の高さの差で決定されるので、パラメータによる違いは下部水槽の水面位置の差に帰着させることができる。そのため、流動不安定が生じない範囲で吸気量を大きくすることが必要で、基本的には吸気位置を高く、絞り比を小さく、吸気管の弁開度を大きくする。また、垂直管の弁開度については、絞った方流動が安定する傾向にあった。
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