人や犬などの大型動物の大動脈内で観察される乱流現象のシュミュレーションとして、アクリル製直円管流路内に本年度開発した間欠流発生装置を用いて乱流を発生させその物理的性質の観察を行った。間欠流発生装置は、従来より使用している実験装置の駆動部に取り付けたサーボモータを外部からマイクロコンピュータを用いることで、回転速度を一周期内でコントロールすることによって、アクリル製流路内に発生させる流れ場の間欠時間を制御している。この装置により、血流の振動に類似した周期内に流体が静止する時間を有する間欠流をアクリル製流路内に発生させ、間欠時間が乱流発生に及ぼす影響を観察した。 その結果、間欠時間が十分に長い場合には丸山らの報告と同様に乱流の発生が抑制される。これは間欠時間中に流体粒子内に残存する擾乱が減衰するためである。さらに、間欠時間の影響を調べた場合にその長さに依存して、乱流の発生する移相が後退する現象が観察された、これも静止時間中に擾乱の減衰率に影響されているものと考察している。ただ、間欠時間がある程度以下の場合には、振動流とほぼ同じ現象であったのは、エネルギー供給が駆動側からは終了しているにも関わらず乱れが発生しているため興味深い現象であると考えられる。 また、このような時間的に乱流現象に含まれるスペクトル成分が変化する場合には、瞬時周波数を観察する必要がある。そこで我々はデータ収集の為のサンプリング周波数を上げることにより時間窓を設けても、十分な周波数特性が得られるだけのデータ数を確保してデータ解析を行った。その結果、乱流へ遷移する直前の移相でインテグラルスケールやマイクロスケールに非常に特徴的な現象が発生していることが観察された。これは乱流発生メカニズムを解明していくうえでもさらに検討していく必要があるもとの考えられる。
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