研究概要 |
自然エネルギーの開発を始めとするこれからのエネルギー対策においては,熱交換器の高性能化は必須の課題であるが,その基本は伝熱促進にある.本研究は,粒子の壁面衝突や境界層攪乱などの伝熱促進の要因を内在する固気混相流に周期電場を付与し,粒子運動を電気流体力学(EHD)的に制御することにより,壁面熱伝達の向上を追求するものである.具体的には,方形波状の交番電場,およびon,off状態を周期的に繰り返す間欠電場の2種類を対象とし,電場中の粒子挙動と伝熱特性を電場の周波数およびDuty比(一周期中の正極電場の印加時間の割合)と関連づけて追求した結果,以下の知見を得た. (1)固気混相流に正極および負極の電場を同じ時間間隔で交番させて付与すると(Duty=0.5),周波数が40Hzの場合には,クーロン力の方向が短い周期で反転を繰り返すため多くの粒子は鉛直上方に直線的に運動する.周波数がより短く,Duty比を0または1に近づけるほど,粒子は両壁面と活発に衝突・反発を繰り返す. (2)壁面衝突した粒子の一部は壁面との接触により電荷を放出した後、壁面と同極性に再荷電され,クーロン力により異極性の対向壁へ移行する様子が高速度ビデオ観察により確認された.また、このような粒子の自己荷電による飛び出しが電場極性の反転による外部制御よりも優先するため、交番電場による粒子運動の制御が困難であることが明らかになった. (3)交番電場を付与した場合、周波数が低くなるにつれて粒子の壁面衝突が活発となり,これにより熱伝達率が向上する.また、Dutyを変化させた場合、Duty=0.5で極小値をとりDutyが0または1に近づくにつれて伝熱促進効果は増加し,最終的に直流電場の値に漸近する. (4)間欠電場を付与した場合、周波数による熱伝達率の影響は殆ど見られず,Dutyの増加により伝熱促進効果は単調に増加することが判った.
|