平成7年度は、当初の計画どおり、測定装置を設計・製作し、常温域において、ラプラス変換法の基本原理の健全性について研究した。以下に、具体的な内容を示す。 1.周波数可変の誘導加熱を用いたラプラス変換法による測定原理に関する研究:非均質材料を多層材料と仮定し、誘導加熱による内部発熱がある場合の各層毎の非定常1次元熱伝導方程式をラプラス変換し、初期温度一様な初期条件、試料表面と裏面において熱伝達が存在する境界条件および各層間において温度と熱流束が連続となる境界条件のもとで、測定原理式となるラプラス像平面における解析解を導いた。また、測定原理式から熱物性値を求める逆問題解析のアルゴリズムに逐次シンプレックス探索法を応用した。そして、常温において、ステンレス鋼の裏面の温度履歴から、熱拡散率(3.7mm^2/s)とBiot数(1.0×10^<-3>)を決定することに成功し、均質材料に対する測定原理の健全性を確認した。 2.多層材料への応用:ラプラス像平面における解析解による数値計算により、非均質材料を模擬して設計した多層材料は、温度履歴に対する層間の接触熱抵抗の影響が大きいことが明かとなった。今後、接触熱抵抗を考慮した測定原理について研究を進める。 3.非均質材料への応用:炭素繊維強化炭素複合材料では、温度履歴に対する誘導加熱分布の影響が大きいことが明かとなった。今後、誘導加熱分布について研究を進める。 4.周波数可変の誘導加熱装置の設計・製作:交流電流発生装置と加熱コイルから構成される誘導加熱装置を設計・製作した。交流電流発生装置は、コンデンサに充電された静電的エネルギーを負荷に放電する倍電圧方式として、その充放電制御素子をスイッチングサイリスタ素子とした。また、コンデンサの容量は、交流電流の周波数が0.1MHzから1MHzの間で可変となるよう選定した。
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