研究概要 |
乱流拡散火炎のシミュレーションにおいて、フレームレットモデルは有力な反応モデルの一つである.このモデルでは乱流拡散火炎を層流火炎片の集合と考え,完全保存スカラー変数である混合分率(f)によって,層流拡散火炎から求まる濃度等のスカラー量(φ)を表現し(f-φ線図),乱流計算で求まる混合分率fとこのf-φ線図を関連付けることによって,種々のスカラー量を求めている.ここで,完全保存スカラー変数としては,C元素,H元素,あるいは不活性分子N_2の質量分率などが主に用いられる.フレームレットモデルの最も簡単な例として反応速度無限大の一段不可逆総括反応を仮定したモデルがあげられるが,このf-φ線図を用いた計算では,工学的に重要な化学種であるCO,H_2などの成分が予測できない.また,このf-φ線図では反応の有限性,拡散速度などの流れ場の条件は考慮されておらず,これらを考慮した場合にはf-φ線図を一意的に決定することに問題が生じる。そこで本研究では同軸流層流拡散火炎を対象に,素反応を考慮した数値解析から,反応の進行に伴う燃焼場の変化がf-φ線図に如何に影響するかを検討した. 今回の研究では,CH_4,CH_3,CH_2をはじめとする17成分の化学種を考慮し,これらの化学種を含んだ58個の素反応スキームを用いた.燃料はCH_4であり,内径10mmのノズルから噴出させ,周囲流には空気を一様に流した.ノズル出口での境界条件はノズル内側及びノズル外側での流速はそれぞれ1.5(m/s)及び1.0(m/s)とし温度はそれぞれ300(K)とした.中心軸上での境界条件には各物理量の勾配を零として与え,半径方向の計算領域は,火炎の影響が計算領域の終端に及ばないように設定した. 以上の計算により,次のような結論が得られた.(1)同軸流層流拡散火炎の数値解析データにおいて,混合分率でスカラー量を整理すると,火炎中心軸付近のデータにばらつきが見られた.これは同軸型の燃焼ノズルを用いた場合には火炎中心軸付近で周囲の火炎の影響を受ける特異な燃焼場が形成されているためと推測される.(2)完全保存スカラー量としてC元素及びH元素をもとに作成したf-φ線図(f_C-φ線図とf_H-φ線図)に差異が認められた.これは反応で生成したH_2の拡散速度が他の化学種より大きいことから反応領域の周辺にH_2が広く存在するためであり,フレームレットモデルにおいて,混合分率の定義が反応モデルの構築上,考慮すべきファクターの一つであることを示唆している。
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