扱うパ-ツが小さくなると、表面積に関連した力が飛躍的に増大する。マニピュレータで扱う物体がミクロンオーダーにまで小さくなると、体積力である重力の影響が小さくなり、表面積などに起因した粒子間相互作用力により、グリッパ表面へのマイクロパ-ツの付着やパ-ツ同志の凝集といった問題が発生する。空気中で問題となる相互作用力として本質的なものに、ファン・デル・ワールス力、液体架橋力、静電力の3つがある。これらの力は、物体の大きさがミクロンオーダーになると、重力より大きくなる可能性がある。 そこで、本研究ではマイクロマニピュレータによる微小物体のハンドリングにおける操作性の改善に対して、粒子間相互作用力を考慮した新たな観点からの検討を行った。まず、作業対象や機械部品のマイクロ化(mm以下)を伴う作業と、通常のミニチュアレベル(mm〜cm程度)の作業との本質的な差異を明らかにした。また、粒子間相互作用力による物体の付着といった問題に関して改善法を示し、それを実際のマイクロマニピュレータシステムへ応用した。特に粒子間相互作用力の中で影響の大きいと思われるファン・デル・ワールス力の軽減策として、エンドエフェクタ表面の材質を変更したり、その表面粗さをかえることを検討した。この有効性をみるために、解析を行い、実験を行った。表面粗さを変えるために、Si表面をエッチング(等方性、異方性)することにより凹凸面をつくった。この凹凸をマイクロピラミッドと命名した。用意した様々な検査面に微粒子を付着させ、遠心力によりその微粒子を分離させた。そのときの回転数を変えることにより、遠心力を変化させ、微粒子の付着しにくさを確認することができた。このような軽減策により、操作性を改善する見通しがたった。
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