1.開発した微小変位テーブル 本微小変位テーブルは、超精密加工用に開発されたものであり、高剛性、高位置決め精度の特徴を持つ。本テーブルは、垂直方向の切込み機構に圧電素子を、水平方向の送り機構にDCサーボモータとスチールベルトを用いている。セラミック製加工テーブル裏面がアルミコーティングされた超精密基準面(平面度λ/30)となっており、加工点垂下の基準面の切込み方向変位をレーザ測長器(分解能1.25nm)で測定する。その変位をフィードバックすることにより、工具と工作物の相対位置を高精度に制御する。本微小変位テーブルの特長を以下にまとめる。 (1)加工点と測定点が同一直線上にあり、「アッベの原理」を満たしているため、切込み方向変位の測定誤差を小さくできる。 (2)切込み機構上に送り機構を搭載するため、送り運動に伴う変位や振動を圧電素子で補正できる。 2.微小変位テーブルの性能(得られた結果を以下にまとめる) (1)微小変位テーブルの切り込み方向変位ストロークは10μmである。 (2)テーブルを水平方向に送りながら、切り込み方向変位分解能を調べた結果、送り速度が5mm/sまでは切り込み分解能は5nmといえる。 (3)周波数応答特性を調べた結果、微小変位テーブルの制御帯域は85Hzであった。 (4)静剛性は187N/μm(無性御時)であった。また制御を行うことにより静剛性の向上が図れる。少なくとも100Nの荷重までは制御により変位の補正ができ、静剛性は無限大になることが確かめられた。 (5)テーブルの送り運動に伴う変位や振動を制御により補正できる。テーブルを水平方向に100mm送った時の真直度は無制御時に0.5μm以上あったが、制御により10mm以下に補正された。 (6)インパルスハンマにより加工点であるテーブル中央を加振することにより、動コンプライアンス特性を得た。制御時と無制御時の特性を比較すると、80Hz以下の帯域では剛性の改善が認められた。 3.微小押込試験による硬脆材料の延性/脆性遷移領域測定 本微小変位テーブルを利用して、ダイヤモンド圧子による硬脆材料へのサブミクロンの押込試験および引掻試験ができる装置を試作した。シリコンへの微小押込試験を行い、その延性/脆性遷移領域の測定を試みた。
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