研究概要 |
象の鼻のような多数の自由度を有する多関節ロボットは、アーム全体の姿勢も制御できるため障害物を回避しやすく、アーム全体としての運動性能を改善しやすいなどの特異な機能性を持っている。筆者はこれまでこのような超多自由度ロボットアームを実現するため,‘ワイヤ干渉駆動機構'を提案し,その有効性を計算機シミュレーション及び10自由度ワイヤ干渉駆動型ロボットの機械モデルより確認してきた。しかしワイヤ干渉駆動型ロボットアームは全く新しい機構であり、その制御法については、まだ検討が不十分である。そこでここでは、以下に示す研究を行なった。 ・動力学的な効果も考慮する膨大な冗長自由度を有するワイヤ干渉駆動型ロボットアームの特有制御法を提案した。本手法はワイヤの牽引で駆動する機構の特性を考慮しながらワイヤ張力の2乗和を最小化するものである。さらに計算機シミュレーションによりその有効性を検討し、アームの運動冗長性とワイヤ駆動系の駆動冗長性を同時に取り扱う方法が、ワイヤ干渉駆動型ロボットアームの制御法として最も有効であるという結果を得た。 ・提案した動的な制御法を10自由度ワイヤ干渉駆動型ロボットの機械モデルに適用し、実際の機械モデルによる実験を行なった。実機による実験結果は計算結果との差があるものの、ほぼ期待通りのものになっていた。 しかし、象の鼻型多関節ロボットアームは多数の自由度を持っているため、本研究の制御法はoff-line制御の場合に限って有効である。本研究を通じて、象の鼻型多関節ロボットアームの実時間制御が極めて困難であることが判明し、今後この問題に焦点を絞って検討していく。
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