研究概要 |
将来,人間の居住環境で働く高性能ロボットは,複雑かつ柔軟な運動が要求され,極めて多くの冗長自由度をもつ超多自由度ロボットになると予想される.このとき,計算機の演算能力の観点から,中枢による全自由度の統括的な制御は困難であり,中枢が制御すべき知的運動以外の運動は各自由度の自律分散制御を行うべきである.そこで本研究では,超多自由度ロボットを構成する各ユニットが中枢の指令を受けることなく,自律的に外界情報に対応して反射運動を行うのみで全体の運動軌道を生成する新しい制御法を提案した.その適用例として平面直列多節移動ロボットを取り上げ,そのユニットである関節の障害物回避の反射動作のみで,ロボット全体が障害物のある地形から脱出する運動制御を試みた. まず,関節と障害物との距離の2乗に反比例する反発力を与えるポテンシャル場を定義し,その反発力によって順次関節が移動する制御則を提案し,障害物で囲まれた袋小路からのロボットの脱出の計算機シミュレーションを行った.その結果,ロボットの脱出を確認し,制御手法の有効性を明かにした.また,部数,節長がロボットの脱出確率に及ぼす影響を明らかにした.さらにロボットが動作収束状態となる例を取り上げ,その場合,周辺の関節も障害物とみなして反射回避動作を行うプロセスを導入することにより,脱出確率が大幅に向上することを明かにした. 次に,DCサーボモータで関節角変位を与え,電磁石で静止系の鋼板との着脱を行う10自由度直列多節平面移動ロボットを試作するとともに,各関節にマイクロコンピュータを搭載した反射運動の局所制御系を構築した.試作ロボットにより,一定のシーケンス動作による移動を確認するとともに,提案した反射運動のみによる軌道生成を試み,ロボットがほぼ障害物を回避しつつ地形から脱出しようとする運動を確認した.
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