今日のエネルギー事情を考慮すると、超伝導電力機器の開発が必要不可欠であるが、これらに使用される超伝導導体に電流を一様に流すことは、従来の銅線とは異なり困難であり、そのため期待される性能が出ず、実用化へ向けての大きな問題となっている。本研究では、超伝導導体内の不均一な電流分布のメカニズムを解明し、その一様化のための設計指針を得るために、これまでほとんど測定されていない実際に使用される導体内の電流分布を非接触で測定できる新しい電流分布測定法の開発を試みた。本測定法は、超伝導導体のまわりに配置した検出コイル群で測定した導体表面の自己磁界分布と、導体内の電流分布を仮定した3次元磁場解析の計算結果とを比較することによって、間接的に電流分布を推定するものである。 今年度の研究実施結果は、以下の通りである。 1)まず、新しい測定法に必要となる数値計算による3次元磁場解析法を開発した。 2)次に、導体表面の自己磁界分布を測定するために必要な微小な検出コイル(コイル断面積0.3mm×3mm)を作製し、室温における銅線の模擬導体を用いた実験で、非接触での電流分布の測定が可能であることを示した。 3)さらに、実際の超伝導導体に本測定法を適用し、定性的ではあるが、その電流分布を測定できた。また、冷却過程におけるコイルの歪みにより測定精度が下がるが、この歪みを低減するためには、コイル群を接着剤で固めて固定することが有効であることを実験的に示した。 4)導体内の電流分布を定量的に議論するためには、測定感度のさらなる向上が必要であることがわかった。そのために、不均一な電流成分による信号のみを取り出すキャンセリングと呼ばれる手法を導入した。この方法での測定の有効性については、室温における模擬導体での実験で現在検討中である。
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