本年度は、面方向(100)及び(111)の低抵抗Si基板上に成長させた強誘電体弗化物BaMgF_4膜の強誘電体特性を検討した。Si(100)基板上に成長したBaMgF_4(011)配向膜は膜の垂直方向に分極軸を含まないため分極特性を示さないが、Si(111)基板上に成長したBaMgF_4(120)配向膜は分極軸を含むため分極特性を示すことを明らかにした。またSi(111)基板上に成長したBaMgF_4(120)配向膜のスイッチング特性や自発分極の疲労特性の評価を行い、分極反転時間40ns以下で10^<11>回までの分極反転に対して自発分極の疲労がないことを確かめた。以上のことから、BaMgF_4/Si構造をデバイスへ応用する場合、Si(111)基板を用いることが有効であるとの知見を得た。 次にBaMgF_4/Si構造のデバイス応用について検討するために、BaMgF_4(120)/Si(111)構造の電界効果トランジスタを作製し、トランジスタ特性を評価した。抵抗率10〜20Ωcmのp型Si(111)基板上にゲート絶縁膜として膜厚170nmのBaMgF_4膜を成長し、チャネル長10μm、チャネル幅100μmのnチャネル電界効果トランジスタを作製した。作製したトランジスタは相互コンダクタンス0.4mS程度の正常なトランジスタ動作を示すことを確かめた。さらにBaMgF_4膜の自発分極による約1.4Vのしきい値電圧変化を確認できたことから、強誘電体の分極特性を利用する新しい電界効果トランジスタはBaMgF_4/Si(111)構造を用いることで十分実現可能であるとの結論を得た。
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