研究概要 |
ペロブスカイト構造を持つ遷移金属酸化物の中で、人工格子を形成させる為、格子定数、熱膨張係数等のパラメータを考慮してヘテロ成長が期待される組み合わせを選定した。具体的には、誘電体;MTiO_3(M=Ba,Sr,Ca,Pb)、Bi系層状誘電体、磁性体;M^1FeO_3,M^1MnO_3,M^1CoO_3(M^1=Ba,Sr,Ca,La etc.)等である。 まず、レーザーアブレーション法によりSrTiO_3/BaTiO_3超格子およびBi系層状強誘電体人工格子を作製した。前者においては、格子のミスマッチにより積層界面にはGPaオーダーの大変大きな応力が結晶化学的に導入できることが明らかになった。この結晶歪により正方晶の性質が強調された。この圧力効果により人工格子は(Sr,Ba)TiO_3固溶体の単相膜と比較して、高温/高周波数においても高い誘電特性を示した。このように、積層界面に発生する格子歪により、大きな結晶化学的な圧力を常温・常圧でも導入することで、新規の超強誘電特性発現が期待できる。さらに格子歪による結晶構造のピンニング効果により、構造相転移温度(キュリー温度)の高温化への道を拓くものとして期待できる。さらに層状構造をもつBi系層状強誘電体人工格子においては、次元性および結晶対称性を制御することにより強誘電性を人工的に変化させることが可能となった。 一方計算化学においては、分子動力学計算により結晶構造変化(構造相転移)を予測することにより、ペロブスカイト構造を構成するプラスイオンのわずかな変位による結晶構造転移が電気特性変化に対応していることが明らかになった。 今後の機能性材料研究においておよび機能物性のメカニズムを解明していくうえで、計算化学と組み合わせた人工格子による物質創成は非常に有効であると考えられる。
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