YBaCuO高温超伝導薄膜を用いた磁束フロー素子の作製技術の確立 素子作製のための要素技術となる、結晶性の良く制御されたY_1Ba_2Cu_3O_<7-δ>-SrTiO_3-Y_1Ba_2Cu_3O_<7-δ>積層膜を再現性良く得ることを目的に、Nd:YAG固体レーザ使用の可能性と、成膜のモニタ法について調べた。その結果、Nd:YAGパルスレーザの4倍高調波を用い、再現性に優れたYBaCuO(c軸)/STO(a軸)/YBaCuO(c軸)積層薄膜の作製技術を確立した。YBaCuO薄膜成膜中の膜表面の放射温度は、膜の成長過程(格子欠陥)との強い相関を有し、成膜中の膜表面の放射温度は、欠陥を含まない良質な膜を得るためのモニタ法として利用できる事を示した。さらに、STO絶縁層は酸素の拡散を抑える事を示し、YBaCuO膜の酸素ドープ量は500°C付近の熱処理により、熱平衡状態の相図に従って、可逆的に制御出来ることを明らかとした。 多層膜を用いた積層型磁束フロー素子の作製と特性評価 YBaCuO薄膜を用いて作製したステップ-エッジ素子の電流一電圧特性をBardeen-Stephen磁束フローモデルに基づいて調べ、磁束フロー特性の温度、磁場依存性は、自己磁場を考慮したBardeen-Stephenモデルによって定量的に記述できることを示した。また、局所磁場の印可により従来型に比べ変調特性を改善できることを実験によって示した。すなわち、MgO基板上の段差に形成した単層型素子と、コントロールラインを接合直下に有する積層型素子の二通りについて実験により調べることによって、局所磁界印可の効果を明らかとした。さらに、高周波動作時に重要となる、高温超伝導薄膜の残留抵抗、カイネティックインダクタンスについて、実験により調べた。
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