研究概要 |
多元スパッタリングにより、(Pb,La)TiO_3(La/ti=0.17)薄膜試料を作製し、その電気的特性を調べた。酸化ルテニウムを上部、下部の電極材料として用いることで、残留分極値の初期値は小さいものの、10^7回の分極反転ではほとんど疲労を起こさない試料を得ることができた。 さらに、Pt/MgO上の(Pb,La)TiO_3薄膜に関して、疲労前後の電気的性質の変化を調査した。10^7回の分極反転疲労により、ヒステリシスループのE軸に添ったシフト、ループ形状の対称性の低下、残留分極の減少、リ-ク電流の1桁程度の増大、といった変化を示した。また、疲労したキャパシター試料に高電圧印加、熱処理を行い、その特性に与える影響を調べた。疲労により減少した残留分極が、高電圧印加によりいくぶん回復した。また、熱処理により、疲労後の試料の抗電界が減少し、分極の飽和が良くなった。その時の反転残留分極、非反転残留分極の双方の変化を調べ、高電圧印加、熱処理の役割について考察した。これらの実験結果を検討したところ、空間電荷と呼ばれる有極性失陥の発生が分極反転疲労の原因であると結論した。 さらに、欠陥と強誘電特性の関連を調査するために、アルゴンイオンエッチング、熱処理が特性に与える影響を検討した。アルゴンイオンエッチングにより、薄膜表面の鉛が一部還元されることが、X線光電子分光の結果から明らかになった。エッチングされた面に電極を付けて測定を行ったところ、エッチング前に比べ、ヒステリシスループのE軸に添ったシフト、残留分極の減少、抗電界の増加、が生じることがわかった。700℃、N_2雰囲気で1h熱処理することで、表面の酸素、鉛が減少した。電気的特性としては、熱処理前と比較して、ヒステリシスループの矩性の低下、残留分極の減少、が認められた。
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