研究概要 |
近年,マイクロマシンの要素技術である電磁型アクチュエータは,より小型化あるいは薄膜化される傾向にあり,反磁界の影響をどう抑えるかが,アクチュエータ開発の重要なポイントとなってきている.本研究では,この問題を解決するために,アルミニウムの陽極酸化磁性皮膜を改良し,直径0.2μm,長さ10μmの針状の磁性粒子を膜面に垂直に無数に並べた磁気繊毛を開発し,これを利用して,小型平面アクチュエータを試作することを目的とした. 本科学研究費補助金により,直径0.1μm,長さ30μm,アスペクト比300の針状の磁性体が膜面に垂直に無数に並び,垂直磁気異方性を示し,膜面に垂直方向の保磁力が500eの軟磁性を有する磁性皮膜を作製した.本研究により,新たに明らかになったことを以下に示す. (1)針状磁性体間の相互作用による反磁界とその低減 膜面に垂直方向の反磁界の低減を目的に,皮膜微細孔中の針状磁性体のアスペクト比と反磁界との関係を検討した.その結果,針状磁性体間には相互干渉による反磁界が存在し,皮膜の膜面に垂直方向の磁化を妨げることが明らかとなった.また,陽極酸化の際の極間電圧を二段階に切り替えることにより,一般に限界とされている極間電圧よりも更に大きな値を実現し,針状磁性体間の間隔を広げ,相互干渉の低減が可能であることを明らかとした. (2)結晶磁気異方性の利用による反磁界の低減 Co-P合金めっき皮膜の表面形態及び結晶構造は,皮膜中のリン含有率にともない大きく変化することを見いだし,皮膜中のリン含有率が,皮膜の磁気特性に及ぼす影響について検討した結果,直流めっきの際の電析条件を適切に選べば,結晶磁気異方性により,膜面に垂直方向の反磁界の低減が可能であることを明らかとした.
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