研究概要 |
熱書き込みが可能であるメモリ効果を有する高分子分散型液晶(PDLC)素子において、高速度低パワーレーザアドレスを行うため、同素子に色素の添加を行う。この際、色素がPDLC素子中の高分子/液晶のいずれの層に多く溶解しているか、色素の着色層の違いが素子の電気光学特性や熱書き込み特性へどのような影響を及ぼすかについて検討した。 (1)PDLC素子の作製 高分子材料として紫外線硬化型樹脂(HEMA:日本化薬社製)を用い,これに色素とネマティック液晶(K15,50wt% + E7 50wt%)を混合した。ポリマーと液晶の混合重量比は、3:1から1:3まで可変した。色素の吸収スペクトル変化および液晶抽出後のポリマーの着色等を検討することにより、高分子層側を着色する色素としてNK-125(日本感光色素)、液晶側を着色する色素としてIRP-101(日本化薬)を見出した。両色素分子の紫外線照射による分解は確認されなかった。 (2)メモリ特性および電気熱光学特性の測定 いずれの色素を添加したPDLC素子においても、色素無添加の素子と同様のメモリ効果が得られた。また、イオン性の強い色素NK-125添加の素子では、電気光学特性におけるしきい値の増加や周波数依存性が確認された。 (3)レーザ熱書き込み特性の測定 液晶とポリマーを加えた重量に対して1%のIRP-101を添加したPDLC素子と0.5%のNK-125を添加した素子において、ポリマーに対する液晶の割合が大きくなると、IRP-101を添加したPDLC素子は書き込みに必要なレーザパワーが急激に増加することがわかった。一方、NK-125によってポリマー層が着色している場合でもIRP-101と同程度のレーザパワーで書き込みが行えるこ、液晶の割合を変化させたときの依存性がIRP-101添加の素子よりも小さいことがわかった。 コントラスト比は、両素子とも液晶の割合が60%程度で最大となるが、NK-125-101添加の素子では色素が無添加の場合と同程度(CR 50)の値が得られた。また、本素子は光散乱状態となっている領域に透明な部分を書き込むこと(ネガタイプ)もできるが、書き込みに必要なレーザパワーはポジタイプとほぼ等しかった。 解像度は、いずれの色素においてもレーザパワー2.5mW、走査速度150mm/sで1500dpi程度が得られた。最適な書き込み条件では5000dpi程度が達成でき、色素の着色層の違いによる解像度への影響は確認されなかった。
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