研究概要 |
特異な非線形孤立波であるソリトンを弾性表面波(SAW)で生成し,レーザを用いた光プローブ法による精密計測システムを構築してSAWソリトンの基礎特性を明らかにすることを目的に研究を行った.128°回転YZ-LiNbO_3単結晶基板上に中心周波数200MHzのSAW素子を用いて,最大3.0W/mmまでの種々の超音波パワーでSAWを励振した.先ずRaman-Nath回折を利用した光プローブ法で高次の高調波振幅の計測を行なった.基板表面にSiO_2膜をコーティングして波動分散制御した素子を大振幅励振すると,強い非線形SAWが得られるが伝搬に伴って波動が回帰することが分かった.また,伝搬速度の振幅依存性,自己収束性等ソリトンを特徴ずける性質を備えたSAWが生成されることを明らかにした(Jpn.J.Appl.Phys.,34,p2653,1995,及びPhyicaB誌上で報告).本法は振幅を0.05Aという驚異的精度で計測できる特徴をもつが,位相情報が欠落しSAW波形を再生出来ない欠点があり,真にSAWソリトンであるかどうかを同定するには十分といえない.このため,ナイフ・エッジ法による光学サンプリング・プローブによる高次の高調波の振幅及び位相を同時検出可能なSAW計測システムを構築した(Jpn.J.Appl.Phys.,35,1996,印刷中).本システムを用いてSAW波形を再現しKorteweg-de Vries型ソリトン方程式に従うSAWソリトンを世界で初めて実験的に確かめることができた.この結果は1996年超音波国際会議(米国San Antonio)で報告する予定である。 一方,高磁歪FeBアモルファス薄膜を用いたLove型磁気弾性表面波の精密測定を行い,外部磁場によるSAW位相制御特性の研究を行った(IEEE Trans.Magn.,31,p4115,1995及び日本応用磁気学会誌,19,1996,印刷中).
|