本研究者は、極めて磁気検出分解能の高いフラックスゲート磁気センサをシリコンプロセスと薄膜軟磁性材料により超小型で実現するマイクロフラックスゲート磁気センサと称する磁気センサを世界に先駆けて開発した。これまで改良を進め、2700V/Tという極めて高い磁気検出感度と、0.6nT/√Hz(DC〜10Hz)の検出分解能が達成され、その優れた性能が実証されてきている。フラックスゲートセンサは、素子を交流励磁し、素子出力から第2次高調波成分を検出するための信号処理回路が必要である。従来、センサ全体が比較的大がかりになるため、応用範囲が限られていた。マイクロフラックスゲート素子は、シリコンプロセスに基づき構成されるため、このような信号処理回路の一体化が可能であり、センサ全体を数ミリ角のチップ上で実現されるとともに、極めて分解能の高い磁気センサとなるため、極めて広範な応用が期待される。 本研究では、実際にマイクロフラックスゲート素子と信号処理回路の集積化を試み、世界的も初めて、その試作に成功した。問題として予想された、磁気センサ素子の製作する際の半導体集積回路への損傷や汚染は、センサ素子の製作工程、特に、低損傷スパッタ装置の応用と最上層に磁性薄膜を形成する素子構造により、問題とならないことが明らかとなった。また、このような集積化磁気センサと並行して、高分解能磁気検出に適したシグマデルタ変調を応用したフラックスゲート信号処理回路を提案し、その回路部のみのLSI化を、メーカーの協力を得て試作し、センサ素子を持続して評価実験を行い、良好な結果を得た。これらの基礎的検討に基づき、目標とする極めて超高分解能集積化マイクロ磁気センサの実現を目指したい。
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