研究概要 |
本研究では、ミリ波低損失フィルタを実現するために、ミリ波帯において10,0000程度の無負荷Qを有する共振素子についての検討、およびそのフィルタへの適応性について検討した。 まず、ミリ波高Q共振器として、誘電体共振器に注目した。誘電体共振器は、温度安定性に優れ、高Q値を実現できることで知られている。本計画では、これを高次モードで動作させるという方針を打ち出した。これによりミリ波で用いる場合でも、適切な共振器サイズを保ち、フィルタに応用した場合の微調整機構の設計が楽になる。具体的には、ウィスパリングギャラリモード誘電体円板(楕円板)共振器およびTM011+dモード誘電体ロッド共振器を提案し、これを検討した。 ウィスパリングギャラリモード共振器は、誘電体円板中を周方向に伝搬する進行波共振器である。周長は波長の数十倍であり、周方向に高次のモードである。本研究では、その共振周波数解析、および、誘電体導波路で過結合励振したときの共振特性、について理論的・実験的検討を加えた。さらに、20GHz帯において設計したアルミナ誘電体円板および楕円板共振器に、実際にウィスパリングギャラリモード共振を生起させ、その共振特性を測定した。 一方、TM011+dモード誘電体ロッド共振器はロッド長が波長の数倍であり、ロッドの軸方向に高次の定在波共振を生起する。同軸モノポールアンテナの採用により、効率よい励振が可能となる。モード展開法をもちいた厳密共振器解析により、30GHz帯で共振器を設計し共振特性を実験的に明らかにした。低損失である(Ba Mg Ta) TiO4セラミックを共振器材料としてもちいた結果、目標の無負荷Q値、約1万を実現した。これにより同共振器の高Q性が実証された。 以上のように、本研究計画によりフィルタ用共振器の設計基礎資料を得ることができた。現在、これらの成果を基礎として、フィルタ設計の段階に進んでいる。
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