本研究は、高速通信網の性能を最大限引き出すために必須の最適な呼受付制御法の開発を目的としていた。高速通信網では様々なトラヒックを収容するため、個々の接続呼の要求するサービス品質は大きく異なる。また個々の接続呼のバースト性も大きく異なる。本研究では、高速通信網に特有のこれらの性質を正面から捉え、過去に申請者が開発した性能評価手法を発展させることにより、呼受付制御法の開発に必要な理論的基盤の確立し、それを基礎として、多様なバースト性をもつ様々な呼のサービス品質を同時に満たし得るような呼受付制御法を開発を目指していた。 現在までに、様々なバースト性を持つ接続呼が高速網交換機において統計多重化された時の、システム全体でのセル呼損率を実時間で評価できる理論的解析手法を確立した。そこでは、比較的容易に得られる待ち行列長の裾野分布を用いてセル呼損率を評価する理論的解析手法を考案した。また裾野分布の上界値ならびに下界値の陽表現を導出し、これらを用いてセル呼損率を実時間で計算するアルゴリズムの開発を終了した。これらの成果はIEEE GLOBECOM '95で一部発表済みである。 さらに、動画像トラヒックに対応する周期的なバーストトラヒックが存在する場合について検討を進めた。周期性を持つトラヒックの統計多重は位相によってその性能が大きく変化する場合があるため、実際のネットワークでは注意を払う必要がある。現時点までに、周期的なトラヒックを含むバースト性をもつトラヒックが多重化された場合の呼損率ならびに裾野分布について、基礎となる理論的基盤が得られており、現在、この成果を発表すべく論文を作成中である。またシステム全体でのセル呼損率を基礎として、既に接続された多数の呼に新たに呼を加えた時に生じる、個々の接続呼のセル呼損率の変化量をから、個々の接続呼のセル呼損率を評価する理論的解析手法を考案中である。
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