研究概要 |
本研究は,申請者らが提唱している,図的な仕様記述から高度並列処理実行に至るまで一貫したデータ駆動パラダイムの研究の一環として,以下の点に着目し,複数人での図的データ駆動ソフトウェアの開発支援環境の構成法の確立を目指している. 1.要求仕様の協調的記述手法:現在採用している,図的表現を許す多面的な仕様記述の表現形式を,グループ内での発散的思考ならびに収束的思考の調和が要求される,いわゆる,要求分析段階にも適用可能なように定式化した.具体的には,必要な機能の列挙が可能な機能ブロック図,ならびに,必要なデータ(集合)の列挙が可能なデータ構造図をブレーン・ストーミングの経過を表現可能なように拡張した.これらに加えて、システム外部から見た可観測な振舞の列挙が可能なシーケンス図も同様に拡張した. 2.要求仕様の協調的記述の支援手法:上記手法による記述を,データ駆動原理に基づき解釈し,内部仕様記述,さらには,実行可能プログラムを導出する基礎的手法を定式化した.本手法では,必ずしも完全には記述されない要求仕様記述に対して,不足箇所の誘導ならびに記述相互間の一貫性保証のために,異なる協調者により記述された異なる表現形式間での相互変換を施す.すなわち,処理実行に本質的なデータ依存関係とデータ構造を自然に表現できる,データ駆動型処理モデルを介して,このような相互変換機能を実現する. さらに,上記の手法のカーネル部分を,設備備品として購入した,デスクトップコンピュータ上に構築し,その実現可能性を確認した.今後,実時間制御や通信システムなどの分野における実用的なシステムの開発を想定して,本手法の実用性を実証することが残されている.
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