研究概要 |
デジタル通信システムにおいては,通信で発生する雑音や電波伝搬の影響により受信データが劣化しビット誤りが増加する問題がある.こうした要因によるビット誤りを改善するためには,信号を元の送信信号に戻す等化器が使われる.しかしながら,従来の等化器はトレーニング信号を送信して信号の等化を行っていたので通信の中断を余儀なくされていた.この問題に対し,通信信号のみで等化を行うブランド適応等化器に関する研究が最近注目されている. そこで本研究では,すなわち平均値および自己相関関数のみを使用する新しいブラインド適応等化器について検討を行つてきた.まず,新しい適応アルゴリズムの開発について検討した.さらに,提案するシステムをハードウェア記述言語を利用して論理設計することも検討してきた. 以下に,研究内容別にその実績の概要を述べる. 1.アルゴリズムの提案 従来のブラインド適応等化器は,高次統計量を用いる演算量が多いタイプか,周期定常信号を用いるレートの高いシステムを構築する必要のあるタイプの二種類に分けられ,いずれも実時間処理に向かない欠点がある. そこで本研究では,信号の一次および二次統計量のみを用いるアルゴリズムを開発し,前述の従来法の問題点の解決を試みた.その結果,雑音にロバストなアルゴリズムの開発に成功し,コンピュータシミュレーションでも動作の確認が行えた.問題点は,演算量が現状のアルゴリズムでは多いので,その低減に関して検討する必要がある. 2.論理設計 実時間処理を目的にハードウェア記述言語Parthenonを用いた論理設計も行った.まず,適応フィルタに多用される乗算器のゲート数削減を冗長2進数を用いて行った.さらに,その乗算器を用いて適応フィルタにおけるFIRフィルタの論理設計を行った.その結果,従来の乗算器を用いて適応フィルタにおけるFIRフィルタの論理設計が行った.その結果,従来のFIRフィルタより60%程度ゲート数が削減できることがわかった.今後の課題としては,現状では被乗算すなわちフィルタ係数が定数の場合のみ検討しているので,今後は変数として扱えるように改良し適応フィルタに応用する必要がある. 以上の研究実績結果のように,本研究の目標はほぼ達成されたと考えられる.
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