研究概要 |
1.まえがき イットリウム・鉄・ガ-ネット(YIG)を薄膜を用いた静磁波デバイスの研究が行われているが,その中でも遅延線は基本デバイスである.従来までこの静磁波遅延線は線状または2本のマイクロストリップ線路からなる入出力トランスジューサで構成されていたが,本研究はこのトランスジューサ構造に代わってYIG薄膜上にマイクロストリップ線路で入出力端子を構成した新しいタイプの静磁前進体積波遅延線を提案している. 2.分散曲線 マスクウェル方程式に静磁近似を適用し,複素テンソル透磁率を有するフェライトスラブ内の界を求め,磁壁その他の境界条件を適用して分散関係式(複素超越方程式)を求める.この分散関係式を数値的に解き,各周波数における伝搬定数(位相定数、減衰定数)を求め、この線路の伝送特性を理論的に明らかにした. 3.実験結果 厚さ100μm,長さ17mmの薄膜を用いて遅延線を試作したところ,2.94GHzで0.8μsec以上の遅延特性が挿入損失21dB,伝搬損失34dB/μsecの低損失で観測された. 4.まとめ 従来の分離された入出力トランスジューサを用いた遅延線に代わってマイクロストリップ線路で入出力端子を構成した静磁波遅延線を新たに提案した.その結果,挿入損が少なく長い遅延特性を得る等良好な特性が得られた.このようなマイクロストリップ線路を用いた遅延線はバルク状YIGでは実現できないYIG薄膜独特の構造であることから,この構造を基礎とした新しいタイプの静磁波デバイスの発展が今後期待できる.
|