無線周波数領域における電磁波の人体に及ぼす影響を考える上で重要となる、多層異方性筋肉を含む人体モデルに対する電力吸収特性の解析を行った。特に、研究代表者が先に行った2次元問題における解析手法や計算結果をふまえ、3次元不均質問題に対する解析手法の定式化及びアルゴリズムの構築、及びそれを用いた電力吸収特性の解析を試みた。その結果、低周波領域で電気的異方性を有する多層筋肉を含み、かつ表面部分に周期性を持つ3次元モデルについて、所期の目的を達成することができた。 1.解析の定式化は、まず散乱界に2次元Floquet Mode展開を施し、4×4行列の固有値問題を介することにより各層の電磁波モードの表現を得た。さらに、変分法に基づく離散化手法を用いることにより、周期性をもつ部分の未知量を決定する線形方程式を導出するプロセスを示した。 2.アルゴリズムの構築に際しては、まず、未知複素振幅ベクトルの基本減衰特性を調べ、オーバーフロー等の数知的な不都合がないように初期値を設定した。つぎに、定式化した理論に完全に対応したアルゴリズムを構築し、各モジュールの動作を確認した。 3.本問題の特別な場合である等方性多層モデル及びその補対なモデルについて数値解析を行い、他文献における計算結果と比較することにより、手法の妥当性を確認した。さらに、解の収束性と種々の計算打ち切り因子との関係を明らかにした。 4.以上の検討に基づき、異方性多層筋肉を含み、かつ表面部分に周期性を持つモデルに対する数値解析を行い、異方性に起因する散乱・回折特性や、それらが電力吸収特性に与える影響等について明らかにした。
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