本年度の研究結果は以下の通りである。 まず、近年提案された正則化ギャップ関数を緩和することにより、必ずしも線形とは限らない制約を持つ変分不等式に対しても、容易に計算できる新しい評価関数を提案した。そして、この提案した関数が、もとの写像が連続であれば連続であり、また写像が微分可能であれば方向微分可能であることを示した。また、この関数を用いることにより、もとの変分不等式と等価な最適化問題を構成できることを示した。さらに適当な条件の下で、最適化問題の停留点がもとの変分不等式の解となることを導いた。 次に、ある2次計画問題の解から得られるベクトルがこの評価関数を用いたペナルティ関数の降下方向になることを示した。そして、この事実を用いて変分不等式に対する逐次二次計画法を提案し、強単調の仮定の下で、大域的に収束することを証明した。 さらに、変分不等式に対するニュートン法の部分問題の解から得られるベクトルが、ペナルティ関数の降下方向になることを証明した。そして、このことから、変分不等式に対する新しい大域的に収束するニュートン法を提案した。提案した方法は、強単調の仮定の下で大域的に収束し、さらなる仮定の下で、解に二次収束することを証明した。 また、制約集合が有界であるとき、ある写像が変分不等式の解との距離の上界となることを示した。この結果は、制約集合が有界であるという仮定の下で、D-gap関数が大域的エラーバウンドとなるという定理の証明に用いられた。
|