研究概要 |
電圧波形の計測は,ポッケルス効果を応用した光電圧センサや静電誘導を用いた静電誘導型電圧検出センサなどで計測することができる.なかでも,価格の安さや構造の簡単さから静電誘導型電圧検出センサが現場で有力視されているが,この静電誘導型電圧検出センサは,配電線にギャップのある2枚のセンサ電極板を取り付け,極板間に誘起される電位差を利用して電圧波形の計測を行っているため,実波形とセンサ出力波形の間に位相ずれが観測されている.この位相ずれは,低力率負荷時の無効電力の評価に影響を与えるため問題となっており,これまでに,筆者らは,センサ電極板形状、配電線の幾何学的配置の違いに関して数値シミュレーションを行い,位相ずれの原因究明を行ってきた.しかし,実際の配電系統には,配電線以外に配電線への落雷の直撃防止を目的としたグランドワイヤが設けられており,このため,グランドワイヤの配置位置に関して,グランドワイヤが位相ずれへ影響を及ぼすことが考えられる.そこで,本研究では,配電系統に設置されているグランドワイヤが,実波形とセンサ出力電圧波形との間の位相ずれへ及ぼす影響を解明するため,2種類の静電誘導型電圧検出センサを用いて二次元有限-境界要素法を用いて電界解析を行った. その結果,グランドワイヤの配置位置によって位相ずれへ及ぼす影響が変化することが確認できた.特に,グランドワイヤ配置位置が配電線間隔より短い場合には,位相ずれへ及ぼす影響が大きくなることが判明した.以上から,静電誘導型電圧検出センサの位相ずれは,センサ電極板形状,配電線配置だけでなくグランドワイヤの配置位置にも若干依存することが明らかとなった.なお,実際に静電誘導型電圧検出センサを用いて電圧波形の計測を行う際は,本解析において行ったような数値シミュレーションを実行し,あらかじめ様々な配電線配置,センサ電極板形状並びにグランドワイヤ配置位置に関して位相ずれの値を計算し,データベース化しておき,それをもとにCPU内蔵の計測装置において逐次補正を行うことで実波形の実時間計測が可能であると思われる.
|