研究概要 |
本研究は,科学研究費奨励研究A(_<05750431,>06750476)で行なったむだ時間系のロバスト制御に関する研究を新しい視点から展開させたものであり,一般の制御系に対し,目標値信号と制御入力の情報構造を利用した制御法を確立し,予見とロバスト制御の関係を明らかにしようとしたものである.本年度は,1)予見を考慮したロバスト制御法の開発,2)予見と内部モデルの関係,3)柔軟構造物の大振幅制御法の開発,の3つの具体的な課題の解決を試み,それぞれに関して以下の結果を得た. 1)予見を考慮したロバスト制御法の開発:ある一定時間任意に変化する目標値信号に対して,制御系の偏差を抑制する問題を定式化し,線形2次形式評価関数に対する最適フィードフォワード・フィードバック制御則を導びいた.制御則は,通常のRiccati代数方程式の解を用いて与えられ,最悪なコストを引き起こす目標値信号の形状も求められることを示した.これらの結果は,良好な過渡応答を達成する目標値信号の設定に利用することができる.また,ロバスト制御の観点から上述の結果を一般化し,H^∞外乱抑制を同時に可能にする制御法も得られることを確認した. 2)予見と内部モデルの関係:1)の結果を予見サーボ系の設計問題に適用し,閉ループ内の積分補償と目標値の予見補償によるサーボ系の設計法を導いた.そして,1)予見時間の調整により,閉ループ系の安定度と独立に,速応性を調整できること,2)オーバシュートを極めて良好に抑制できること,が数値実験により確認された.また“予見"と“内部モデル"は独立した関係にあり,予見時間の長いことが,定常特性の改善につながるとは限らないことが明らかにった. 3)柔軟構造物の大振幅制御法の開発:予見サーボ系の制御性能を検証するため,柔軟ビームの振動抑制のための実験装置を製作した.今後の目的は,予見サーボ系により良好な位置決め制御を実現することと,併せて高次モードのスピルオーバを抑制する制御系を開発することである. 現在これらの結果を基に,系の不確かさと予見で得られる制御性能の間にある関係を調べている.
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