研究概要 |
申請者はフラクチャープロセスゾーン(以降、プロセスゾーンと呼ぶ)を有する破壊力学モデルに対する解析関数を基にして、「変位測定によってプロセスゾーンの長さbを最も効率的に推定するには、供試体の如何なる点の変位を計測するのが望ましいか」という問題を解析的見地から考察した。以下に解析手法の手順および解析結果から得られた結論を列記する。 1.y軸上に長さ2aのクラックを有するモデルを例に採り、プロセスゾーンの長さbの変化に敏感でかつ計測しやすい点の変位を選ぶため、bに対する変位の変化率、すなわちx軸方向変位uあるいはy方向変位vをプロセスゾーン長さbで一回微分した|∂u/∂b|(あるいは|∂v/∂b|)の値を求めるための解析関数を複素応力関数から誘導した。ただし導いた関数は煩雑であり列記することを割愛する。 2.導いた解析関数をプログラム化して解曲面を視覚的に分かり易く表示するために、32ビット・パーソナルコンピュータ(PC9821/Na7/Hc7,NEC製)を用いて描画した。 3.プロセスゾーンbの推定曲線の結果を比較検討するために、カラープリンター(BJC-6801,Cannon製)を設置して描画した結果を出力した。 4.これらの結果から次のような結論が得られた。 (1)変化をプロセスゾーン長さbで一回微分した曲面を描いて検討した結果、クラック開口部中央点からx軸方向に少し離れた点で計測してもプロセスゾーンの長さを推定することが可能であることが判明した。 (2)本研究で検討したプロセスゾーン計測位置に関する考察は、既に多くの実験で計測されている位置であって自明な結論であるが、理論的な裏付けを行い従来の計測位置が正しいことを証明した成果は大きい。
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