一様圧縮を受ける矩形平板が、材料の塑性化に伴なって弾塑性座屈を生じ、平板のまま圧縮される主径路から非対称な変形を伴なう分岐径路へと移行する過程を数値解析で追跡した。 ここで採用した動的緩和法はvon Karman-Marguerreの支配微分方程式を数学的近似として差分形に変換し、さらに動的問題と見なして定常解=静的な解を得るという単純な原理に基づいた手法ではあるが、数値解が微分方程式に対して直接的に忠実に得られること、材料非線形性の導入が極めて容易であるという長所を有している。 また、振動問題の定常解として静的な解を求めることから、構造不安定を伴なう分岐点近傍でも、現実に起こり得る安定なつりあい径路のみを振動が減衰する過程で取捨選択して自動的に追跡することができると考えられる。つまり、分岐解析を行なわなくとも安定なつり合い径路が自動的に求まるはずであり、これは大きな長所である。ことろが逆に、どこが分岐点であるか、どの径路からどの径路へ移ったのかという情報が入手されないことにもなるので、そもそもの分岐解析が不可能となる短所も有する。これは解析手法の再考を要する最大の理由となり得る。 数値的検証例として単純なモデル解の結果を他のFEM解析例と比較した。塑性座屈の発生、塑性座屈モードの局所化現象の発生など大枠では合っているものの、細部で異なる結果が得られた。これは数値解析上の問題で、座屈を伴なう問題では数値的なstrain reversalという現象が生じることに起因する誤差であると考えられる。そこで、この数値的disadvantageを克服する方法として、1増分ステップ間では材料特性の変化(塑性化や除荷など)がないと仮定する代わりに荷重増分を小さく設定する方法を採用した。この結果、他の解析例とほぼ一致する解を得ることが可能となり、本手法の実用性が確認された。ただし、いずれの解が正しいかはいまだ不明である。 しかし、いずれの手法を用いても、解析上の長所・短所があり、特に塑性座屈や後座屈挙動解析のような従来の非線形解析以上の高次非線形問題に対する厳密解を得る努力は今後とも継続すべきであると考える。
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