研究概要 |
近年,細粒分を含む砂で埋め立てた地盤において液状化事例が多く報告されている。本研究は,そのような地盤の地震時の変形特性をダイレイタンシー特性に基づく間隙水圧上昇メカニズムから解明するため,三軸試験装置を用いて実験的検討を行った。実験には豊浦標準砂と,これに加茂粘土を混合して細粒分含有率24%および46%に調整した試料を用いた。それぞれ室内再構成して96kPaで正規圧密したもの,および過圧密履歴(OCR=4)を加えた供試体を作製し,液状化試験を実施した。また平均主応力一定の静的排水せん断試験を行いダイレイタンシー特性を求めた。なお,X-Yレコーダーで応力-ひずみ関係を記録するとともに,差圧計を用いて体積変化を測定した。液状化試験の結果,強度は細粒分が多くなるに従って大きくなり,また過圧密試料は正規圧密試料の2〜2.5倍であった。変形は細粒分が多い試料ほど進行が緩やかであった。軸ひずみ-有効応力関係を調べると,細粒分を含む砂ではひずみの進行による有効応力の回復が大きく,変形しにくいことがわかった。そこで有効応力変化をダイレイタンシー特性から検討した。排水せん断試験では細粒分が多い試料ほど体積の収縮量が大きかったが,この結果のみで推定すると間隙水圧上昇量が大きいことになり,液状化試験の結果と矛盾する。そこで間隙水圧上昇量を[体積ひずみε_v/体積圧縮係数m_v]でモデル化したところ,算出される過剰間隙水圧は細粒分を多く含む試料ほど小さくなった。このことは,体積圧縮係数が細粒分含有率に応じて大きくなり,豊浦砂の10〜20倍であったことによる。また,このモデルで静的試験から推定した有効応力経路は,液状化試験の有効応力経路(1波目)とほぼ一致した。本研究の結果,細粒分を含む砂の液状化特性を明らかにするためには,砂の圧縮性を考慮することが重要であることがわかった。
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