研究概要 |
本年度の表題に基づいて行った研究は大きく2つに分けられる.ひとつは意思決定者の意識に基づいたセグメンテーション手法の開発であり,2つめはパネル調査データの分析である. 前者の研究では,まず意思決定者の意識の違いに着目し,その意識を抽出するモデルをPRELISおよびLISRELを用いて定式化し,その推定結果から抽出された個人の態度を表す潜在変数に基づいてセグメンテーションを行うモデルシステムを構築した.セグメンテーション手法として一般的なクラスター分析だけでなく潜在セグメントモデルも新たに適用してセグメント分割の方法論についての研究も行った.その結果潜在的態度に基づいたセグメントはより予測精度が向上することが確かめられた. また,意識の違いを探る為に近年その有効性が指摘されているパネルデータの適用についても様々な試みを行った.そのなかでは主にパネル調査からの被験者の脱落によるサンプル集団のバイアスについての研究を行った.なぜならば,一般にパネル調査からの脱落は交通問題に対する意識との関連が指摘され,交通問題に対し意識の低い人ほどパネル調査から脱落しやすいという報告もなされているからである.本研究によって提案したアトリションバイアスを修正する手法は,交通手段選択モデルのパラメータよりバイアスを取り除くことができ,交通問題に対する意識の低い人の影響を正確に考慮できるモデルが推定された. 本年度はこれらを統合したモデルシステムは構築できなかったが,それぞれの研究において一定以上の成果を残したと考えられる.本テーマの問題はこれからの交通需要管理などのソフト的需要管理策に非常に重要なテーマと考えられるので今後とも研究を続けていく必要がある.
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