本研究は、(1)モフォロジーによる線成分の抽出法の確立、(2)時系列融雪地滑り地域との関連性評価の両面から構成される。 (1)モフォロジーは、構成要素と呼ばれるフィルタ(オペレータ)の特徴を利用して、対象とする物体の形状検出によく用いられる手法である。モフォロジーは2値のモフォロジーと多値のモフォロジーに分類されるが、本研究で取り扱う人工衛星リモートセンシングデータは多値の情報であるため後者を用いた。従来より提案されているopening型およびclosing型境界の最小値で表現される境界検出式は、構成要素の拡大に伴い検出される境界成分も肥大し、また境界以外の成分を検出する欠点がある。これに対し本研究では、広領域・狭領域の両面から境界を検出する方法を提案し、河川境界の検出を例に解析を行った。この結果、従来の手法に対して構成要素の拡大に伴う境界成分の肥大と境界以外の成分検出の抑制に成功した。 (1)融雪地滑りと相関の強いグリーンタフと呼ばれる帯上成分の検出を(1)に基づき行い、実際の現象との関連性を評価するために、融雪機構についての検討を行った。現段階では、近年の温暖な気候により積雪量が不十分であり融雪機構の詳細な把握まで至っていない。本研究の最終成果は、今後多時期のデータが整備されることにより広域な防災計画に寄与するものと考える。
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