都市におけるアメニティー向上や環境改善のための各種構造物・親水空間があまり実効的ではないという現状がある。一方ヒートアイランド(数十kmスケール・解像度は2〜4km程度)や建築物単体の熱環境(数十mスケール・解像度は数cm〜1m程度)の研究に対し、街区スケールの微気候(1kmスケール・解像度は数十m程度)の研究が遅れている再開発等によって設けられる小規模緑地・親水空間の環境緩和効果を定量的に評価し、これらの実効的な配置計画を検討していくためには、街区スケールでの環境予測手法の確立が必要である。本研究では特に、総合設計制度による公開空地に注目し、実現性のある微気候改善手段の提示を目標としている。 建物の周囲に作られる空地の熱環境の評価を行うため、夏期と冬期に建物の近傍において固定気象観測を行い、さらに形態の異なる空地について比較を行うため、移動気象観測を行った。また観測結果によりSET^*等体感的な熱環境指標を算出し、空地毎の評価を行った。夏期には日射や地表面・建物壁面からの輻射の影響が非常に大きく、日照条件が微気候にとって最も支配的である。よって、暑熱感をやわらげるためには日射を遮ることが最も効果的である。風速はSET^*を低下させる要因であり、冬期においては日当たりの確保と同時に風を防ぐことが、寒冷感を緩和する上で効果的である。日照の面からは低層高密な街区よりも高層低密な街区のほうが評価されうる。しかし建物の高層化は都市表面の粗度を不均一なものとし、局地的な強風域をつくり出してしまうため、その調整が今後の検討課題である。
|