本研究では、インピーダンス測定法による土壌中水分および物質移動のリアルタイム追跡装置の開発のために様々な実験的検討を行い次のような結果を得た。 (1)本研究では、測定システム全体をコンピューター制御した、土壌カラムのインピーダンス測定システムを作成することにより14個の電極におけるインピーダンスに関するパラメータの値や含水率などを、約5秒で測定し直ちにそれらのカラム深さ方向の分布を画面上に表示することができる、きわめて有効な測定システムを構成した。 (2)様々な温度でのインピーダンスの測定値と含水率や誘電率との関係を求めることにより、土壌のサセプタンスが含水率と線形関係にあること、土壌のコンダクタンスが土壌溶液の導電率と含水率それぞれと線形関係にあることを示した。またこの結果に基づき、土壌のインピーダンスの値をあらわす理論式を導き、実験データを用いた比較検証を行うことにより、20℃付近の温度においては比較的よい結果を得た。 (3)土壌の質の違いがインピーダンスの測定値に及ぼす影響を見るため、土壌の粒径を変えた場合と、ガラスビーズを用いた場合について、温度コントロール条件下において実験を行った。その結果、粒径590〜850μmの実験においては、理論値との一致が見られたが、特に粒径が細かい場合には、理論値からはずれる傾向が見られた。 (4)本研究では、土壌の持つインピーダンス特性の定量的モデル化に基づいた、簡便な検量線作成方法について検討し、カラムに精製水を満たしインピーダンスを測定することによって、カラムの形状係数を求める方法を提案した。そしてこの方法を実測データに適用することにより、体積含水率が、数%程度の誤差の範囲で求められることを示した。
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