都市中心部を流れる河川の多くは、内水排除のための水路として雨天時には洪水流を流下させるが、晴天時の基底流量は少なく水質汚濁は十分改善されていない。一方、市民への親水空間の提供とともに自然浄化能力の回復を図る施設整備が進められつつあるが、その水質改善効果の定量的な評価は十分おこなわれていない。そこで、本研究では、都市河川水路網および流域からの雨水・汚濁負荷流出モデルを作成し、10年間の時間降雨量データをもとに負荷流出シミュレーションを実行し、年間汚濁負荷流出量の算定・評価をおこなった。ついで、近自然工法の実施河川での観測結果から直接的自然浄化策の機能評価をおこない、下水処理水の放流制御などさまざまな環境改善および修復の施策代替案を立案し、費用/効果分析を行った。さらに、浸水防止を主目的とする貯留施設の容量の一部を雨天時汚濁負荷削減のための初期貯留に配分することによる、浸水防止効果および汚濁負荷削減効果の総合評価を行った。 以上の成果を踏まえて、各サブモデルを連結した統合システムを開発中であるが、その応答性やシステム機能の面で改善の余地がある。特に、環境修復事業の施策評価結果と市民による診断評価との連結をはかるために、水辺空間の視覚的評価と物理化学的評価との関係付けを試み、統合モデルによる水質予測が、行政的な施策実施の判断材料であるとともに、市民による身近な環境づくりへのインセンティブとなるためには、視覚的かつ動的な画面構成にするなど情報工学的な観点からシステムを再構成する必要がある。
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