研究概要 |
本研究は、従来処理が困難であり海洋投棄に委ねられてきた硫酸塩等の各種の塩類・アミノ酸および有機物を高濃度に含むアミノ酸系発酵工程廃液を、上向流式嫌気性ハイブリッドブランケット(UAHB)法と接触酸化法とを組み合わせた複合処理によって最適に処理することを目的としている。本研究で用いたUAHB装置は、従来から研究が進められているUASBリアクターに改良を加えたもので、UASB部(下部)と嫌気性ろ床部(上部)を組み合わせたものである。さらにその上部には固・液・気相の分離装置として三相分離器が設置してある。このUAHB法によりアミノ酸系発酵工程廃液の有機性成分を処理し,二段接触酸化法により残存する有機成分の酸化およびアンモニア性窒素の硝化を行う最適処理法の確立を目指した。 上向流式嫌気性ハイブリッドブランケット(UAHB)法による廃液処理では,上部に嫌気性ろ床を設け,処理水環流を行わない方式を導入することにより,明らかに装置下部での自己造粒化を促進させる効果が認められた。また,自己造粒後も安定した汚泥濃度が維持され,TOCは下部で80〜85%,上部で10〜20%除去されることが実験的に確認された。このことから,スラッジベッド上部にろ床を設けるこのUAHB装置の有効性が実験的に明らかとなった。また,反応槽内のpHを制御することにより,メタン発酵菌と硫酸還元菌との共存が成立し,硫酸還元菌によるメタン発酵菌への阻害の発現を阻止し得たことは,大きな研究成果であると考えられる。 二段接触酸化法による,UAHB装置からの処理水中に残存する有機物のさらなる浄化とアンモニア性窒素の硝化については,UAHB装置に流入する基質の濃度および水理学的滞留時間の変動によりその処理水,すなわち二段接触酸化装置への流入水の濃度が変化したにも関わらず,有機物除去に関しては良好な処理結果が得られ,アンモニア性窒素の硝化についてもほぼ満足できる結果が得られた。また,良好な硝化反応を継続させるには一定負荷以下でなければならないことが実験的に明らかとなり,最適運転条件の設定に関する知見が得られた。 以上のことから,UAHB法と二段接触酸化法との組み合わせによる難分解性廃液の処理への適用が可能であることが明らかとなり,その最適運転条件の設定に関する知見も得られた。
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