研究概要 |
鋼構造架構特有の破壊形式である圧縮部材の曲げ座屈破壊に焦点を当て,載荷速度と座屈耐力との関連性を実験的に明らかにした. 実験用の試験体は,鋼構造建築架構における筋かい材やトラスの個材などの圧縮部材を想定し,一般的に使用されている円形鋼管と,標準的な鋼材の材料特性を見るための充実矩形断面の2種類を対象断面に選定し,STK400鋼,SS400鋼を用いた試験体を作成した.円形鋼管では製造工程での加工硬化の影響を少なくするため,熱処理の効果を考えて溶融亜鉛めっき処理を行った.また部材細長比は非弾性座屈域,限界細長比周辺,弾性座屈域,の中から5〜7通りを適宜選択した.載荷パラメータは載荷方法(単調圧、圧載荷,正負交番繰返し載荷)と,載荷速度(35mm/secの動的載荷および静的載荷)である.実験において,特に座屈部材の変形量測定には高精度・高速応答性が要求されるため,補助申請設備の非接触測定可能なレーザー式変位計を購入して用い,実験結果の精度確保に努めた. 実験から得たデータに基づいて,載荷速度が部材の曲げ座屈体力および復元力特性に及ぼす影響を定量的に評価した結果以下の点が明らかとなった.すなわち,限界細長比を超える弾性座屈域ではオイラー座屈式により評価できる座屈耐力が示され,載荷速度の影響を受けないヤング係数により耐力が決まるため,速度の効果はほとんど見られなかった.また,限界細長比以下の非弾性座屈域では,動的載荷時のひずみ速度効果によって降伏耐力が上昇し,座屈耐力をこれと連動して変化することが確認できた.しかし,部材長さが載荷速度の大きさに比べて相対的に小さいため,特に顕著な変化は見られなかった.むしろ正負交番繰返し載荷における引張載荷時の降伏点上昇の影響が顕著に見られた.
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