研究概要 |
建築構造物の信頼性解析に必要なものとして,建築構造システムの終局限界状態を厳密に評価しうる確定論的な数値解析プログラムを作成した。本解析プログラムは下界定理,上界定理を応用した実用的なものであり,多層多スパンの平面骨組を扱うことができる。なお,崩壊荷重係数を求める部分では線形計画法を用いた。 信頼性解析に関わる部分では,点推定法の一つである3ポイント法を構造システムの信頼性解析手法に応用し,建築構造システムの解析に適用可能な信頼性解析手法を開発した。また,先に用意した確定論的な構造物の数値解析プログラムに応用し,実用的なレベルでの解析の可能性を検証した。その結果,本信頼性解析手法は従来の確定論的な計算プログラムをそのまま用いることが可能で,かつモンテカル法等の確率論的解析手法よりも大幅に計算回数を低減できることを実証した。少ない試行回数で統計論的な情報が得られる本手法を用いれば,近年普及のめざましいパーソナルコンピュータを用いての信頼性解析も十分な精度で可能であり,こうした実用性も本研究の成果として挙げられる。また,点推定法を用いて解析する過程で用いられる崩壊モードは,その構造物が有する主要な崩壊モードとみなすことが可能であることも明らかにした。 点推定法を応用した信頼性解析に関わる部分は,いくつかの非線形の限界状態関数を対象にその精度と適用範囲に関しても検討を行っている。この結果に関しては,日本建築学会大会の学術講演梗概集に発表している。また,実構造物を想定した多層多スパン骨組の解析結果と崩壊モード探索法に関しては国際会議に投稿済みであり,来年度の発表を予定している。
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