夏季における人体への湿度影響に関するデータを収集することを目的とし実験研究を行った。オフィス環境試験室において、SET^*を一定にして、相対湿度を変化させた環境に被験者を曝露した。温冷感、快不快感、熱的受容度、乾湿感に関して申告行わせた。被験者を椅座静位に保つのではなく、1.2メットを想定した運動を間欠的に行わせる方法を提案した。衣服内の湿度を測定し、局所ぬれ率を算出した。これらの結果を早稲田大学理工学部において田辺・木村によって行われた実験とカンサス州立大学環境研究所においてRohlesらによって行われた実験と比較した。その結果等SET^*条件において、定常時には相対湿度の相違は温冷感、快不快感、熱的受容度、乾湿感、乾湿受容度等に影響を与えなかった。温熱感的にみると夏期の35%相対湿度環境は、在室者に問題を与えるものではないと考えられる。局所ぬれ率やまばたき許容時間も環境の相対湿度の影響を受けないことがわかった。すなわち、相対湿度35%では目の乾燥による問題は生じていない。皮膚角質層の水分量は環境の相対湿度と相関があった。一般に乾燥肌の限界は相対湿度で20%以下といわれているが、乾燥肌と角質層水分量との関係は今後研究を進める必要があると考えられる。加えて、湿度の非温熱的影響に関して文献研究を行った。皮膚の乾燥、ハウスダスト、ダニはアレルギーを引き起こす可能性がある。カビ、喘息発作の原因になる。ウィルス、空気感染の可能性がある。静電気ショック等に関しても調査を行った。これらの結果を被験者実験による温熱感申告結果と比較し快適湿度範囲に関して考察した。
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