研究概要 |
大学キャンパスを核とした地方都市の市街地再整備の可能性を考える前提として,大学と都市の関係をA)都市大学,B)大学都市,C)郊外学園都市という3つに類型化し,これを念頭に,1)既成市街地内の日本型大学(名古屋大学東山キャンパス)2)既成市街地内のアメリカ型大学(ポートランド市立大学)3)アメリカ型キャンパス・タイプ(マサチューセッツ大学アマ-スト校)4)郊外学園都市・日本型大学都市(筑波研究学園都市・筑波大学)5)ヨーロッパ型大学都市(ルーバン・ラ・ヌ-ブ)を調査対象として,キャンパス・マスタープラン,都市計画資料の収集,計画担当者へのヒアリングを行った。 1)と2)・3)の比較おいて,特筆すべきは,ポートランド市立大学のマスタープランにおいて,環境をつくるア-バン・デザインのゴールとしてキャンパスを位置づけ,しかも大学をただ単にキャンパス単体として扱うのではなく,キャンパス周辺地区も含んだ大学地区として扱っている。これは,マスタープランのレベルで,大学自体が都市の中心市街地の再整備において重要な核となるという位置づけを行い,地域にコミュニティをつくるために大学を戦略的に使っており,当研究での目的に合致した事例として,今後さらに詳細な調査・検討に値する。4)と5)の比較においても,ルーバン・ラ・ヌ-ブの1992年の総合計画では,周辺部にサイエンス・パークをつくり,大学との連携の中で,より多様な活力をもった都市を作り出すことを計画の目標に掲げている。これも,市街地再整備を考えたとき,大学と都市を一体化した考えの下で計画を考えていくことが重要であるということを証明する事例である。今後は,この2つについては,さらに詳細な,分析・ヒアリング等を行い,市街地再整備手法の要因となりえるものを抽出検討し,大学キャンパスを核とした市街地再編手法の提案を試みる。
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