研究概要 |
陽電子消滅により,Siの空孔-酸素複合体を同定する手法を確立し,それらの欠陥の導入・形成過程,またその性質を決定することが本研究の目的である. 25keVのBF_2^+とAS^+を2.0x10^<15>cm^<-2>まで注入したSiO_2(5nm)/Si(100)について,導入された空孔型欠陥を低速陽電子ビームを用いて検出した.未焼鈍のAs^+注入した試料については,Sパラメーターを上昇させる空孔型欠陥が検出されたが,BF_2^+注入した試料についてはSパラメーターが減少した.Sパラメーターの減少は空孔-酸素複合体が導入されていることを示している.実際のLSI製造工程をシュミレートするため,対応する熱履歴を経た試料の欠陥分布を測定したところ,As^+注入,BF_2^+注入ともに,表面近傍に空孔-酸素複合体が形成されていることがわかった.ただし空孔-酸素複合体の濃度はBF_2^+注入した試料の方が高かった.空孔-酸素複合体は,表面のSiO_2膜からリコイルで打ち込まれた酸素と,イオン注入により導入された空孔型欠陥が相互作用して形成される.本研究の結果より,Fが酸素と空孔型欠陥の反応を高める触媒として働くことがわかった.特に,as‐implantedの試料においても,すでに空孔-酸素複合体が導入されていることを示した. リコイルによる酸素と空孔の反応が,Cz-Si中の酸素にどの様に影響されるかを知るため,700keVのP^+を1.5x10^<13>cm^<-2>まで注入したSiO_2(10nm)/Si(100)について,その空孔分布を測定した.ここで,SiはCz基板とCz基板上に10ミクロンのエピ膜を形成したものを用意した.測定結果より,Cz基板中の酸素は,欠陥分布を試料表面方向にシフトさせることがわかった.これは,空孔-酸素複合体を形成することによる,単一原子空孔の拡散距離の減少が原因である.また,Cz基板では,表面近傍に大量の空孔-酸素複合体が形成されることがわかった.
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