研究概要 |
本研究ではTi合金ナノ粒子をアーク蒸発法によいり作製し,超高分解能分析電子顕微鏡によりその形態,構造について観察を行った.目的組成を有する合金微粒子を得るためには,融点および蒸気圧の影響が大きく左右するためそれらの物性が比較的近いTi-V合金について研究を行ったところ,作製されたナノ粒子はほぼ目的組成を有するものを得ることができた.また,合金組成を簡便に変化させるため,母材にはTiとVの粉末を秤量しその圧粉体を電極として利用した.粒径40nm程度のナノ粒子の電子顕微鏡観察によると,約15%Vの微粒子には焼き入れω相がバリアントを伴って析出していることが,ナノプローブ回折,暗視野像,高分解能像から明らかとなり,焼き入れω相が母相に対してほとんど歪みを与えない整合なものであることが明らかとなった.また,同程度の粒径を持つ10%Vナノ粒子においては,マルテンサイトが微粒子同士の接合領域に認められ,焼き入れω相と比べるとマルテンサイトの方が幾分大きな歪みを伴うことがわかった.これらのことから,Ti合金ナノ粒子の性質はバルクなものとほとんど同じ現象が再現されることがわかった.しかしながら,粒径が30nm以下の超微粒子においては未だω相やマルテンサイトが確認されておらず,この付近にマジックサイズが存在するものと考えられる.また,ナノ粒子に対して熱処理や電子線照射を施すことによって出現するfcc相は酸化が原因であり,たとえ電子顕微鏡内での観察といえども電子線照射中にナノ粒子中の酸素濃度が高まることがEDS分析の結果から明らかとなった.
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